L'Appréciation sentimentale 2

映画、文学、漫画、芸術、演劇、まちづくり、銭湯、北海道日本ハムファイターズなどに関する感想や考察、イベントなど好き勝手に書いてます

大阪心斎橋STANDARD BOOK STOREと梅田の蔦谷書店

大阪でよく泊まるホテルはもっぱらカプセルホテルばかりで、心斎橋のアサヒプラザ、AMZA、梅田の大東洋、カプセルインといったところである。今回もまたアサヒプラザに宿を予約して、南海の難波駅からホテルに向かう途中に、本屋の看板があるではないか。

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STANDARD BOOK STOREとある。以前に来たときはなかったので、割と最近オープンしたのだろう。一階が古着屋になっていて、地下への入口がどこなのか少々分かりづらいが、エスカレーターを下ると、オレンジ色のランプに照らされた空間が広がっている。中は想像以上に広い。「本屋ですが、ベストセラーはおいていません」というキャッチフレーズが最高に気に入った。

四角形のテーブル型ブロックを基本とした本棚が構成され、その周囲をぐるぐる回りながら本を探す作りとなっている。各テーブル事にテーマが設定されている斬新な配置デザインには、たしかにベストセラーだから優遇されている本は一冊もないといって良いだろう。各ジャンル毎に、本当に良書と言われる作品を平積みしている。話題のビジネス書も無ければ、通俗的な本もない。この品揃えは青山ブックセンターを彷彿とさせる。いわゆる玄人筋には大変受ける構成だ。

ただ、店内をうろついていると、どこに行っても同じ場所のような錯覚になって、迷子になりやすい。これは何度か通うことで解消されるだろう。併設されているカフェも興味深かったが、店内を探索しているうちに閉店時間となってしまった。眺めるだけでも楽しくて、飽きの来ない書店だ。


そして翌日は大阪駅ルクア9Fにある蔦谷書店へ。

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ここは本屋の棚という概念を大きく覆す店の作りとなっている。店全体に円状にぐるりと棚が配置され、その円周を回るような移動を。店内にはカフェが二つ並列されている。この店内配置を考えた人は天才だろう。なんだか、本棚という棚を巡る回遊魚のような気分になってくる。

店内を歩いていた、就活中の格好をした20代前半と思しき女性客の会話が聞こえてきた。

「本って読む?」
「読まへん。何を読んだらいいかわからへん」

みたいな内容だった(大阪弁があっているかどうかは自信が無いが)。
この会話に、書店というか、読書業界が抱える全ての問題が集約されている。彼女らも書店を訪れるくらいだから、本に興味がないわけがない。並べられている本の数があまりにも膨大すぎて、何が面白いのか、どう選んだらいいのか、分からないのだ。
本が売れないのではない。どんな本を買えばいいのか、客の方が全く分からないというのが実情なのだろう。だから、せっかく客が本屋に寄っても、結局買わずに出て行くわけだ。

ウェブサイトによると、ここの蔦谷書店にはコンシエルジュが配置されている。いわば本のソムリエだ。これからの書店には、話しかけやすく、どんな本を読みたいかを聞けばたちどころに答えてくれる、名物カリスマ書店員のような存在が必要ではないか。それも、そういう存在がいるということをうまく宣伝し、気さくに話しかけてもいいことをお客さん側にうまく知らせる必要がある。今後の書店に必要なのは、どういう本を買ったらいいか分からない、というお客の要望にいかにうまく応えていくシステムを作るかにかかっている。