L'Appréciation sentimentale 2

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『ぐるりと』島崎町 全く新しい形式の実験小説

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『学校の12の怖い話』の島崎友樹あらため島崎町先生の新刊『ぐるりと』(ロクリン社)が6月下旬に発売された。さっそく私も発売されて書店に並んだ初日に購入することができた。今では品薄で、なかなか入手しにくいようだ。セブンイレブンで取り寄せたという友人もいた。

先日も、ライトノベルの比嘉先生を招いて『ぐるりと』の出版記念イベントが札幌市内のカフェで行われ、とても盛り上がった。会話の巧妙さ、キャラの多さと活躍の場のバランス、テクニカル面の工夫など、二人が小説の執筆に対していかに真摯に打ち込んでいるかが分かるトーク内容で、こちらも大いに刺激を受けた。

『ぐるりと』は、ページをめくると、ページが上下に分かれており、上段が縦書き、下段が逆さまの横書きになって半分が空白となっているのが大きな特徴だ。中には上段と下段の両方文字が埋まっているページがある。こういう形式で書かれた本は初めてだ。横書きの本は通常なら右閉じで、縦書きの本と読む方向が逆である。これを、本をひっくり返すことで一冊の本で縦書きと横書きの両方を味わうことができるという離れ業をやってのけたのが『ぐるりと』である。

最初のページを読み進めていくと、なぜこのような書き方になっているのかが分かる。主人公が図書館にてとある分厚い辞典のような本を発見する。その本が、『ぐるりと』と全く同じ形式で書かれている本なのだ。主人公が本を読み、下段のページを読むべく本を逆さまに「ぐるりと」ひっくり返して読むと、突然世界が変わってしまう。図書館からいつの間にか真っ暗闇に包まれた、しかも怪物がうろついている異世界に飛んでしまうのだ。こうして主人公は本を逆さまにひっくり返しながら、現実と異世界を行き来しながら冒険を繰り広げていく、というわけだ。

ネタバレになるのでこれ以上は書くのはよそう。ぜひ実際に体験して面白さを味わって欲しい。児童書にもかかわらず300ページを超える厚さにビビるかもしれないが、実質半分なので、実際のボリュームはこの半分である。この夏にもってこいの、手に汗握る冒険ファンタジーであり、そしてホラーの要素もふんだんに盛り込まれている。小学生のお子さんを持つ親御さんにもオススメである。