L'Appréciation sentimentale 2

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劇団どくんご「愛より早くFINAL」札幌公演@円山公園自由広場

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今年も劇団どくんごの季節がやってきた。札幌円山公園で行われる夏の風物詩は、鹿児島に拠点を置いて全国ツアーを縦断している劇団どくんごの公演である。

 

背景となるカーテンが場面が変わる毎に次々に取り替えられて、新しい背景=カーテンが出現する。そうして、役者がまた入れ替わってつぎの場面が開始されるという、その連続がどくんごの演劇をコアを形成している。動詞を使った連想ゲームのような台詞、詩のような味わい深い言葉の数々・・・。どくんごの面白さは、全くうかがい知れない言葉と、その連想、さらには合唱や踊りなど、天衣無縫なきらめきに役者と言葉が輝いているところだろう。

 

今回は「愛より早くFinal」と銘打たれた題で、昨年の「愛より早く」と一部見たことがある場面もいくつか散見された。デジャヴのような何か懐かしい、それでいながら初めて見るような感覚がわき起こって、思議な快感に全身が襲われる。とくに、なぞの力「マカマカ」について語りながら、コンロで熱せられた中華鍋でチャーハンを炒めて皿に盛り、レンゲを添えて最前列の客に手渡すぶっ飛んだ場面は、今年も見ることができた。

ユニークなのは、背景=カーテンが全て取っぱらわれて、ステージの向こうに広がる円山公園をも「ステージ」として舞台を空間として拡張させる演出だ。役者達は円山公園という「ステージ」に飛び出して、大声で台詞を発しながら縦横無尽に駆け回る。この空間の拡張が、どくんごをよりどくんごとして機能させているのだ。

たまたま犬を連れて散歩している人や、ランニングで身体を鍛えているランナー、たまたま買い物帰りの地元住人との接触もあるだろう。決して交わることのない演劇と日常の空間が重なり合う奇跡。このことについてはかつてこのブログでも書いたことがある。どくんごを見た者は誰しもこの演出にやられて、毎年どくんごの演劇を観に行かずにはいられなくなってしまうのである。かくいう私もこの魅力にすっかりとりつかれてしまって、今では例会のメンバーと夏にどくんごの演劇を観に行くのが恒例行事となっているわけで、かれこれもう5年近く続いているわけだ。

 

札幌公演は今日で最後である。これを見ずして札幌の夏は過ごすことはできない。あなたの住んでいる地域にどくんごが来るときは、芝居小屋を訪れてみよう。きっとあなたの感性が激しく揺さぶられるはずだ。