さらば、両さん!
ジャンプで不動の連載記録を打ち立ててきた『こち亀』が最終回を迎えた。永久に終わることがないと信じてきた、そして、あまりにも「当たり前」に存在していた作品が、終わってしまう。もし『こち亀』が終わるとしたら作者の急逝しかないと信じて疑っていなかった(過去に作者の急逝により激しくショックを受けたのは、藤子・F・不二雄だ)。
コミックス200巻を機に連載を終えるという決断を下したのは、作者である秋本治の苦渋の葛藤であり、そして英断だろう。物心ついたときから『こち亀』が僕の傍らにあった。漫画の読み方を学んだのも、『こち亀』のおかげだ。百科事典のように膨大にちりばめられたトリビア、広いテーマ性、独特のセンスで繰り出される豊富なボキャブラリー。地下世界から深海、宇宙空間まで縦横無尽に駆け巡る破天荒な両さんの行動は、常に自分を気持ちを励ましてくれた。自分のボキャブラリー形成に大きく寄与したのも『こち亀』の影響が大きい。
『こち亀』が終了するという一報が流れてから、メディアの扱いも大きくなった。著名人のこち亀に対する思いが記事で紹介され、NHKのニュースでも特集が組まれていた。葛飾区の公式ツイッターでは、『こち亀』一色になった亀有駅の写真が公開されている。漫画界のなかでも屈指の「戦場」とも言える『週刊少年ジャンプ』で、40年間一度も連載を落とすことなく続けてきたことが、想像を絶するほどすごい偉業なのか、それはもっともっと評価されてもいいだろう。
「当たり前」のように続いてきた『こち亀』が唐突に終焉を迎えることで、その価値がどれほど偉大だったのか、今改めてそのすごさに瞠目するが、最終回ゆえにに寂しさを感じるのかと言えば・・二度目のことだから、衝撃は緩和されている。なぜなら、69巻に収録されている「両さんメモリアル」のニセ最終回で、かつて最終回のショックを味わった影響があるからだ。だが、今回は本当に最終回だ。それでも、今回の最終かもドッキリで、300巻も出るくらいこれからも続くのではないか、と思わずにはいられない。そこが、こち亀の影響力の凄さであり、これもまた、とてつもない偉業ゆえになす技なのだろう。