L'Appréciation sentimentale 2

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未来予測は天気予報ではない。

前回の続き。
河合雅司著『未来の年表2人口減少日本であなたに起こること』(講談社新書)は、絶望の未来のオンパレードだ。読むと非常に絶望的な気持ちを抱く、というか、危機感を煽る記述が満載だ。だからといって、これはやばいと焦るのは早い。なぜなら、『未来の年表2』で描かれているのは天気予報のようなもので、現状のデータから未来を予測した地続きのフォーキャスト(予測)した未来でしかないからだ。しかも、悪化した問題を解決したとしても、その未来はただの現状維持にすぎない。本書を絶望の教科書として扱い、問題解決にもとに囚われると、非常にお役所的な、画一的で、現状維持のつまらない未来が一丁上がりとなる。

 

未来の予測は、天気予報を見て対策する自然災害と違って、人間の力やアイディアでチャンスを無限に広げることだってできるのだ。アラン・ケイの「未来を予測する最善の方法は、未来を発明することだ」という有名な言葉を思い出す。理想をどう実現するかをまず決めて、そこからどうすればいいのかをバックキャスティングして考え、実行すること=発明することが、未来を最も楽しく考えることになるだろう。

 

現状を一歩抽象化させた視点から、年齢、職業など関係なく、多多様な多くの人たちと、現状に囚われた限界を取っ払って、理想の未来をまず決め、そこから未来のシナリオをバックキャスティングして考えてみる。フューチャーセンターなどで行われる「デザイン思考」だ。札幌市では上田市長の時代(2012年)に札幌1000人ワールドカフェといったイベントが行われており、その模様については私もブログでレポートした。そのワークショップの成果がどこまで反映されて、秋本市政に継承されているかまではわからないが、むしろあのような、未来を考えるワークショップを毎年定期的に開催した方がいいのではないだろうか。

 

市政に期待するよりは、ミニマムなところから、少しでも多くの個人が「理想の未来」を発明するべく実践するのがベストだろう。参考となるのは、リンダ・グラットン『LIFE SHIFT』で描かれているような、個人が様々な未来を自らのライフストーリーに構築していく方法だ。現状維持ではなく、理想の生き方を実践するプロセスが、個人単位から社会へと波及していくことにつながる。そして、故・渡辺保史さんが2004年にせんだいメディアテークで行った「共有のデザイン」(ダウンロード可能)のように、個人とコミュニティの実践もまた今なお参考になる。

不安を煽る本書がベストセラーとなる現状は、かなり危機的な状況だろう。不安は読者を思考停止させ、理性を喪失させる。だが、ここで思考停止してはいけない。どうせ対策で費用が掛かるなら、理想の未来からからバックキャスティングして考えた方がはるかに楽しく、楽しい未来を構築することができるだろう。絶望的な未来をフォーキャスティングするよりも、理想の楽しい未来をバックキャスティングして実現していこう。「未来の年表」に囚われずに、柔軟で逆転の発想と思考の転換こそが、絶望的な未来を変えるために何よりも必要なことだと思う。